引越しの契約後にキャンセルをしたい場合もあるかと思います。たとえば、次のようなケースが考えられます。
- 契約した業者より安いところが見つかった
- 契約後の対応に疑問を感じたのでキャンセルしたい
- 引越し自体が延期になった
引越しの契約をキャンセルした理由はさまざまですが、その際、「いつまでならキャンセルできるの?」「キャンセル料はかかるの?」など、心配になるポイントがいくつかあるのではないでしょうか。
結論から言うと、引越しのキャンセルは「2日前まで」なら可能です。引越しの前日や当日でもキャンセルはできますが、キャンセル料が発生するので注意しましょう。ですから、もしキャンセルしたい場合は、できるだけ早めの連絡が肝心です。
ここでは、引越しのキャンセルに関するルールについて詳しく解説します。また、キャンセルする上での注意点や、さまざまな疑問にもお答えします。
国土交通省の定める「標準引越運送約款」とは
引越し業界には、ほとんどの業者に共通するルールのようなものがあります。それが「標準引越運送約款」です。標準引越運送約款は、国が定めている引越しのルールです。
その内容の一部を紹介します。
標準引越運送約款にある内容の一例 |
キャンセル料の書かれた見積書を発行すること 見積もり時に必ず標準引越運送約款を提示すること 見積もり料は請求しないこと 付帯サービスを行ったときは料金を請求できる 見積もり時に内金、手付金を請求しないこと |
これらはあくまで一例ですが、標準引越運送約款には細かな取り決めがあります。多くの引越し業者は「標準引越運送約款」を契約上のルールとして採用しています。
下記でも紹介しますが、標準引越運送約款には、もちろんキャンセルに関するルールもあります。ですから、ほとんどの引越し業者は、同じキャンセルルールを採用していると考えておきましょう。
独自で定めた約款が認可されている引越し業者もある
ただし、一部の業者では、独自の約款(取り決めのようなもの)が認可されているところもあります。その場合は、業者が決めたルールに従うことになります。
とはいうものの、業者が決めた独自のルールも、国が認めたものでなければいけません。ですから、業者が独自に決めたからといって「法外な取り決め」になることないので安心してください。
見積もりの際に、キャンセルの規定について必ず確認しよう
標準引越運送約款によると、見積もりの際に「キャンセルの決まり」について必ず提示することになっています。ですから、キャンセルに関するルールについては、業者のほうから説明があるはずです。
ただし、見積もりの際に、「契約上のルール」をパッと見せて済ませてしまうケースがあるもの事実。ですから、キャンセル料が発生する期日や金額については、自分からも聞いて確認するようにしましょう。
いつまでにキャンセルすれば手数料は発生しないの?
それでは、キャンセルの期日や違約金について具体的に説明していきます。
標準引越運送約款では、「キャンセル料と発生する期日」を次のように定めています。
【キャンセル料が発生する期日】
キャンセル日 | キャンセル料 |
引越し前日 | 見積書にある運賃の10%以内 |
引越し当日 | 見積書にある運賃の20%以内 |
ただ、あまりギリギリの時期にキャンセルするのは良くありません。業者も引越しに向けてトラックや作業員を手配しているはずですから、直前のキャンセルは迷惑がかかります。引越し契約をキャンセルする場合は、できるだけ早く連絡しましょう。
引越しをキャンセルすると違約金はいくらになる?
それでは、キャンセルした場合、違約金はいくらいになるのでしょうか。
キャンセル料についてのポイントは、「運賃に対して発生する」ということです。見積書を見れば、料金内訳のところに「基本運賃」または「運賃」と書かれている項目があるはずです。そこに注目しましょう。
たとえば、運賃が20,000円の場合を考えてみましょう。その場合の違約金は、次のとおりです。
- 【前日のキャンセル】違約金は2,000円以下
- 【当日のキャンセル】違約金は4,000円以下
このように、たとえ直前のキャンセルでも、高額な違約金は発生しにくいです。もちろん、引越しの2日前までにキャンセルした場合は、違約金は発生しません。
もし法外なキャンセル料を請求されたときは、まず契約内容を見直しましょう。請求された金額がルールと異なっている場合は、支払いには応じないようにしましょう。
引越しを延期する場合もキャンセル料は発生する
何らかの都合で、引越しが延期になるケースもあるかと思います。「引越しが延期になっても、また同じ業者に依頼をすればキャンセル料は請求されないのでは?」と考える人もいるかもしれません。
しかし、延期の場合も、一旦キャンセルすることに変わりはありません。そのため、上記で説明した「キャンセルに関するルール」が適応され、引越しの2日前までに申し出なければ違約金が発生してしまいます。
ですから、引越しが延期になったときでも、キャンセルの期日には十分に注意してください。
引越し業者は2日前までに変更がないかを確認する必要がある
ただし、期日を過ぎてもキャンセル料が発生しないケースがあります。
標準引越運送約款では、次のような決まりがあります。
標準引越運送約款
業者は引越し予定日の2日前までに申込者に連絡を入れ、見積書にある内容に変更がないか確認しなければいけない
つまり、引越し業者は違約金が発生する期日までに、申込者に変更がないかを確認するのがルールになっています。
もし業者が確認の連絡を怠った場合は、たとえ申込者が前日・当日にキャンセルしても、違約金を請求できないことになります。
確認の連絡がなかったのにも関わらずキャンセル料を請求された場合は、ルールを無視した違法行為ということになります。いずれにしても、ルールを無視した違約金の請求には十分に注意しましょう。
引越しをキャンセルする場合、見積もりでもらった無料ダンボールはどうするの?
引越しをキャンセルするときに良くある問題が、「無料でもらったダンボールの処理」についてです。
ダンボールが無料になるのは「契約者」のみ
見積書に「ダンボール○○枚 無料サービス」と書かれていますが、これは契約者が対象になります。ですから、引越しをキャンセルする場合は、もらったダンボールを送り返すか、買い取らなければいけません。
無料サービスのダンボールを処理する3つ方法
無料ダンボールは、契約者がもらえる特権です。したがって、「契約しない場合」もしくは「キャンセルする場合」は、もらったダンボールを以下3つの方法のいずれかで処理しなければいけません。
【ダンボールを処理する3つの方法】
1.ダンボールを買い取る
ダンボールは返さずに、そのまま買い取ることが可能です。その場合、数千円程度(多ければ数万円)の費用がかかります。
2.宅配便でダンボールを返送する
使っていないダンボールであれば、送り返すことも可能です。ただ、送料に数千円程度かかりますが、これは自己負担になります。
3.自分でダンボールを返しに行く
車があるようなら、ダンボールを積んで営業所まで返しにいっても問題ありません。費用面では、この方法が一番安く済みます。しかし、支店があまりにも遠い場合は、ほかの方法を検討しましょう。
「業者はダンボールを取りに来てくれないの?」と思う人もいるのではないでしょうか。
しかし、業者がキャンセルするユーザーのために動くことはありません。したがって、無料ダンボールに関しては、「実費で買い取る」「送料を負担して返送する」「車で返しに行く」などの方法で処理する必要があります。
引越しを依頼する別の業者に返却をお願いする手もある
引越し自体がなくなっていなければ、キャンセルをしても別の業者に再び依頼することになると思います。
そこで、新たに依頼する業者に「無料ダンボールを返却してもらえないか」を聞いてみましょう。業者によっては、代わりにダンボールを返しにいってくれるケースもあります。
ただ、この方法は、別の業者を利用する場合のみ有効です。引越し自体がなくなった場合は、上記で説明したいずれかの方法でダンボールを処理しなければいけません。
ダンボールなど梱包資材は「契約後」にもらうべし!
なかには、訪問見積もりの際に「無料ダンボール」を置いていこうとする営業マンもいます。そうすれば、契約が断りづらい状況になるからです。
しかし、ほかに条件のいい業者があれば、そちらと契約することも十分に考えられます。ですから、安易に無料ダンボールは受け取らないほうが良いです。受け取ってしまうと、あとになって処理に困ることがあります。
したがって、無料ダンボールなどの梱包資材は「契約後」もらうようにしてください。もし営業マンが契約していない段階でダンボールを置いていこうとする場合は、「契約したときに届けてください」とキッパリ断りましょう。
キャンセル前に利用したオプションサービスの料金は請求される
オプションサービスの内容によっては、引越し日の前に作業を行う場合があります。たとえば、次のようなオプションサービスです。
- 不用品の引き取り
- エアコンの取り外し
- 一時預かりサービス
- ピアノの輸送
もしキャンセルする前にこれらのサービスを利用した場合、料金はどうなるのでしょうか。
このことについて、標準引越運送約款では以下のような取り決めがあります。
標準引越運送約款
付帯サービスを行ったときは、それにかかる料金を収受する
つまり、「もうすでに利用したサービス」の料金は支払わなければいけません。もちろん、これはキャンセル料とは別になります。引越し自体がなくなればオプションサービスが不要になることもありますから、キャンセルの連絡は早めに入れるべきです。
引越しをキャンセルすると見積もり料は請求される?
標準引越運送約款では、「見積料は請求しない」となっています。ですから、見積もりは無料なのが一般的です。
ただし、見積もりの際に、「荷物の積み地または下ろし地」の下見で費用がかかることがあります。この場合は、引越しをキャンセルしたとしても、見積もりにかかった費用は支払う必要があります。
ちなみに、「見積もりのときに内金・手付金は請求しない」という内容も標準引越運送約款に書かれています。ですから、見積もりの際に、内金や手付金という形でお金を請求された場合は、「悪質な業者」の可能性があります。
引越し当日の悪天候によるキャンセルや延期の場合、キャンセル料金は発生するの?
たとえ天候が悪くても、業者が「作業を行える」と判断した場合は、引越しは決行されます。ですから、依頼者の都合で「天気が悪いから引越しを延期したい」となった場合は、延期手数料が発生してしまいます。
台風など、事前に天候が悪くなることが予想できる場合は、キャンセル料が発生しない2日前までに業者へ連絡して相談してみましょう。その段階であれば、キャンセルや延期をしても違約金は発生しません。
引越しのキャンセルに伴うトラブルを回避する方法
引越し業者を選ぶときの決め手となるのは、以下のようなポイントです。
- 引越し料金が適正で、なおかつ安い
- 会社の規模、安心感
- 担当者の対応の良さ
これらのポイントが、引越し業者を決めるうえで大きな決め手になります。実際のところ、あとになって「他にいい引越し業者があったからキャンセルしたい」というケースは非常に多いです。
しかし前述のとおり、契約をキャンセルすると、期日によっては違約金を請求される可能性があります。キャンセル料がかからない期間に解約をしても、無料ダンボールなどの返却に費用と手間がかかることも考えられます。
このような事態を避けるためには、見積もりの際、次のポイントに気をつける必要があります。
【違約金を避けるために気をつけたいこと】
- 見積もり際、キャンセル料についての説明をきちんと受ける
- 引越し業者を即決しない
- 複数社から見積もりを取り、よく検討する
まず大前提として、必ずキャンセル料についての説明をしっかり受けてください。そうしておけば、キャンセルする場合、違約金が発生する期日に注意できると思います。
そして、もう一つ大事なポイントは、複数社から見積もりを取って、よく検討することです。そうすれば、あとになって「別の業者にすれば良かった・・・」と後悔することもなくなるはずです。
複数社の見積もりをカンタンに比較する方法
各社から見積もりを取れば、料金やサービス内容、契約条件などを比べられます。
そこでオススメしたいのが、「一括見積もりサービス」です。
このサービスには全国の引越し業者が加盟しており、各社の条件をカンタンに比較できます。
また、要望に合った業者に対して、まとめて見積もりを依頼できるのも便利です。
ですから、「引越し業者選びで失敗したくない!」という人は、ぜひ一括見積もりサービスを活用しましょう。
法外なキャンセル料金を請求してくる悪徳業者に要注意!
ほとんどの引越し業者は、上記で紹介した「標準引越運送約款」に沿って運営されています。ですから、上記のキャンセルルールを理解しておけば、ほとんど問題はありません。
しかし、キャンセルをすると、稀に、次のようなことを言う業者がいます。
- 「今キャンセルすると料金は全額お支払いいただきます」
- 「この時期にキャンセルはできません」
このように言われると、そのまますんなり受け入れてしまいそうになります。
しかし、キャンセルができないということはありませんし、全額を請求されることも本来はありません。ですから、こういった内容はルール違反になります。間違っても鵜呑みにしないようにしてください。
悪徳請求に困ったときは
あまりにも悪質な業者の場合は、高額なキャンセル料を請求してきたり、脅してきたりするケースもあります。
そのときは、いくら請求されても絶対にお金を支払ってはいけません。もし対応に困るようなら、消費者センターに電話をして相談することをおすすめします。
まとめ
今回は、引越しのキャンセルルールについて詳しく解説しました。
基本的には、「引越しの2日前までならキャンセル料は発生しない」と考えておけば間違いありません。ただし、前日または当日のキャンセルは「違約金」が発生するので注意しましょう。
キャンセルについての知識があれば、いざ解約しなければいけない事情ができた場合でも、落ち着いて対応できるはずです。ただ、業者によってルールが若干異なる場合もあるので、見積もりの際に説明をきちんと受けておきましょう。
しかしながら、引越しをキャンセルするということは、業者が行う準備(トラックや作業員の手配など)をすべて無駄にすることになります。たとえキャンセル料が発生しなくても、業者に迷惑をかけるのは避けられません。
ですから、万が一キャンセルするときは、連絡をできるだけ早めに入れるようにしましょう。それが、業者に対する最低限のマナーです。
とはいえ、キャンセルはできればしないほうが良いです。そのためには、複数社から見積もりを取って、条件をじっくり比較することが肝心です。そうすれば、「別の業者にすれば良かった・・・」と後悔することもなくなるはずです。