引越しの際に、「印鑑登録はどうすれば良いの?」と疑問に思う人もいるのではないでしょうか。
住所が変わる場合は、印鑑登録の住所変更をする必要があります。今まで住んでいた市区町村とは別のところに引っ越す場合は、まず印鑑登録を廃止しなければいけません。さらに、引越し先の役所に行き、印鑑を再登録することになります。
ただし、同じ市区町村内で引っ越す場合は、印鑑登録の変更手続きは必要ありません。
ここでは、印鑑登録を変更するときの手順や必要書類などを詳しく説明します。
印鑑登録と実印の基礎知識
下記の説明をしっかり理解するために、まずは「印鑑登録」と「実印」の基礎的なことについて押さえておきましょう。
印鑑登録とは
印鑑登録とは、「住んでいる市区町村の役所・役場で印鑑を登録すること」です。この手続きをすれば、「印鑑登録証明書」を発行することができます。この書類は、「その人の印鑑であることを公的に証明するためのもの」です。
たとえば、「不動産取引」「車の売買契約」「賃貸契約」「遺産相続」などで実印と印鑑登録証明書が必要になります。
印鑑登録は、住んでいる地域の役所でしかできません。したがって、住んでいる市区町村が変わる場合は、印鑑登録の「廃止・再登録」が必要になります。
実印とは
実印とは、「住んでいる市区町村の役所・役場に登録されている印鑑のこと」です。つまり、登録されていなければ「実印」としては認められません。ですから、実印用に印鑑を作ったからといって、すぐに実印としては使えないのです。
実印は、重要な契約などで使う「公的な印鑑」です。そのため、実印として登録できるのは1人につき1つまでです。さらに、登録できる印鑑には、以下のような条件があります。
【実印として登録できる印鑑の条件】
- 大きさが一辺8~25mmの正方形に収まるもの
- 登録者の名前が彫られているもの
- 外枠があるもの
- 他の人がすでに登録している印鑑は使えない
- シャチハタなどのゴム印は登録できない
- 欠けている印鑑は登録できない
これらの条件を満たしてさえいれば、その印鑑を「実印」として登録することができます。
万が一でも実印を悪用されないためには、大量生産されている三文判やシャチハタなどの安価なものを実印にするのはやめておくべきです。できれば、実印用としてきちんと作ったものを登録するようにしましょう。
引越しの際に印鑑登録の手続きは必要か
前述のとおり、住所が変わる場合は、引越し先の役所で印鑑を再登録する必要があります。なぜなら、印鑑登録証明書には「住所」が書かれているからです。
そうなると、不動産や車などの契約を交わす際、実印と認められずに手続きできなくなってしまいます。ですから、引越しの際には、「印鑑登録の住所変更」を忘れずに行いましょう。
なお、印鑑登録の手続きは、「今まで住んでいた市区町村とは別のところに引っ越す場合」と「同じ市区町村内で引っ越す場合」で異なります。自分がどちらなのかを確認してから、下記の説明を参考にしてください。
市区外へ引っ越すときの印鑑登録の住所変更
今まで住んでいた市区町村とは別のところに引越しする場合、住民票を移すために「転出・転入届」を提出します。印鑑登録においても、これと同じような手続きが必要になります。
まずは、今まで住んでいた地域の役所で「印鑑登録の廃止」手続きをします。期限はありませんが、引越し前にやっておきましょう。さらに、引越し先の役所で「印鑑の再登録」を行います。
この手続きには期限はありませんが、転入などと一緒に済ませておくと良いです。
手続き | 届出場所 | 時期 |
印鑑登録の廃止 | 旧住所地の役所 | 引越し前 |
印鑑の再登録 | 新住所地の役所 | 引越し後 |
印鑑登録の廃止は転出届と一緒に済ませよう
引越し前の忙しいときに、何度も役所に行くのはとても面倒です。ですから、転出届を提出するのといっしょに印鑑登録の廃止もしておきましょう。手続きには、そこまで手間はかかりません。
手順は次のとおりです。
印鑑登録廃止の流れ
- 印鑑登録の廃止申請書を記入する(申請書は役所に置いてあります)
- 申請書を窓口に提出するのと一緒に「印鑑登録証」を返却する
以上で印鑑登録を廃止にできます。転出届に必要な書類とあわせて提出すれば、まとめて処理してくれます。自治体によっては、転出届を提出すれば、自動的に印鑑登録が廃止されるところがあります。この場合、手続きは必要ありませんが、「印鑑登録証」は返却しておきましょう。
ちなみに、「転出届」と「印鑑登録の廃止」を別々で行うことも可能です。
印鑑の再登録と必要書類
印鑑の再登録は、引越し先の役所で行います。これには期限がありませんが、転入届などといっしょに済ませておくと良いです。
印鑑の再登録は、次の手順で行います。
印鑑再登録の流れ
- 印鑑登録申請書を記入する(申請書は役所に置いてあります)
- 窓口に申請書を提出し、印影(印を押した跡)を登録する
- 印鑑登録証が交付される
印鑑の再登録に必要なもの
- 印鑑登録申請書
- 登録する印鑑
- 本人確認書類 ※顔写真があるもの(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど)
登録する印鑑を持っていけば、再登録にはそこまで時間はかかりません。
なお、印鑑登録を済ませると、「印鑑登録証」が交付されます。これは、重要な契約などに必要な「印鑑登録証明書」を発行するときに必要なものです。なくさないよう大切に保管しておきましょう。
顔写真付きの身分証明書がない場合
本人確認するときに最もよく使うのが「運転免許証」です。印鑑登録するときも、運転免許証があれば問題ありません。しかし、運転免許証など、顔写真が載っている身分証明書を持っていない人もいるかと思います。
顔写真付きの身分証明書がない場合は、以下の手順で進めてください。
顔写真付きの身分証明書がないときの印鑑登録
1.以下のものを役所の窓口に提出する
- 印鑑登録申請書(役所に置いてあります)
- 登録する印鑑
- 本人確認ができるもの(健康保険証など)
2.後日、「照会回答書」が送られてくるため、必要事項を記入する
3.再び役所の窓口に行き、以下のものを提出する
- 照会回答書
- 登録する印鑑
- 本人確認ができるもの(健康保険証など)
この場合、通常の手続きより手間がかかります。ですから、近いうちに実印を使う用がなければ、引越しが落ち着いてから印鑑登録をしても良いと思います。
同一市区内での引越しは印鑑登録の住所変更が不要
上記で説明したのは、「今まで住んでいた市区町村から別のところへ引っ越す場合」の手続きです。しかし、同じ市区町村内で引っ越す場合は、印鑑登録について何もすることはありません。
同一市区内で引っ越す場合は、入居してから「転居届」を提出します。この手続きをすれば、同時に「印鑑登録の住所変更」をしてくれます。したがって、この場合は、印鑑の「廃止」や「再登録」などをする必要はありません。
ただし、同じ市内での引越しでも、区が変われば管轄の役所も変わることがあります。この場合は、印鑑の廃止・再登録が必要になることがあるので注意しましょう。
代理人が印鑑登録を申請するときの必要書類
もし役所に行く時間がなければ、代理人を立てることで申請が可能です。ただし、その場合の手続きは少し複雑になるため、その日のうちにすぐ登録することはできません。
代理人が印鑑登録の申請をするときの手順は、次のとおりです。
代理人申請の流れ ※本人とは「登録する印鑑の所有者のこと」です。 |
1.委任状、印鑑登録申請書を用意して本人が記入する (これらの書類は役所に置いてありますが、自治体によってホームページからダウンロード・印刷できるところもあります) 2.代理人が以下の書類を持って窓口に行く 委任状 印鑑登録申請書 登録する印鑑 代理人の印鑑 代理人の身分証明書(運転免許証、健康保険証、パスポート、マイナンバーカードなど) 3.本人に登録意思の確認(役所からの電話または職員の直接訪問) 4.後日、本人宛に「照会回答書」が送れてきたら記入する 5.代理人が以下の書類を持って、再び窓口に行く 照会回答書 登録する印鑑 代理人の印鑑(認印可) 本人と代理人の身分証明書(運転免許証、健康保険証、パスポート、マイナンバーカード、年金手帳など) 6.代理人が印鑑登録証を受け取る |
まとめ
ここまでの説明で、引越しするときに行う「印鑑登録の住所変更」について理解できたかと思います。
それでは、引越しにともなう印鑑登録の手続きについてまとめます。
【印鑑登録の廃止・再登録】
廃止 | 再登録 | |
届出場所 | 旧住所地の役所 | 引越し先の役所 |
届出時期 | 転出届を出すタイミング(期限なし) | 転入届を出すタイミング(期限なし) |
手数料 | なし | 200~500円程度 |
代理人 | 可 | 可 |
必要書類 | 廃止申請書 印鑑登録証 | 印鑑登録申請書 登録する印鑑 本人確認書類(顔写真付きのもの) |
備考 | 同じ市区町村内で引っ越す場合は、印鑑登録の手続きはありません。 |
引越しは何かと忙しいですから、印鑑登録の手続きを面倒に感じるかもしれません。とくに期限が決められているわけではないため、ついつい忘れがちになります。
しかし、実印や印鑑証明書などは、重要な契約を交わすときに使います。ですから、引越しの際は、「印鑑登録の廃止と再登録」をきちんと行いましょう。印鑑登録の手続きは、転出・転入届を提出するのと一緒のタイミングで行うとスムーズです。そうすれば、手続きするのを忘れてしまうこともなくなるはずです。