引越しのときにかかるお金のなかで、最も大きなウェイトを占めるのが賃貸アパートやマンションに入居するときの「初期費用」です。
そのため、「初期費用はいくらかかるの?」と気になる人もいるかと思います。
初期費用には、敷金や礼金、仲介手数料など、さまざまな費用が含まれます。初期費用の目安は「家賃の4~5ヵ月分」になりますが、入居する物件によって変わります。
条件によっては初期費用に20万円以上の差が生じるケースもあるため、費用内訳などをしっかり理解しておくと良いです。
ここでは、賃貸へ入居するときにかかる初期費用の内訳や相場について詳しく説明します。さらに、初期費用を安く抑えるコツも紹介します。
賃貸物件へ入居する際の「初期費用」とは
初期費用とは何か?
賃貸物件に入居するためには、敷金や礼金、仲介手数料など、さまざまな費用がかかります。それらの費用をすべて含めた総称を「初期費用」といいます。
初期費用は、おもに家賃の金額によって変わります。家賃が高ければ、初期費用もその分高くなる仕組みになっています。
ただ、物件によって敷金が高くなったり、礼金を徴収しなかったりするところがあります。ですから、そこの貸し主が提示している条件によっても初期費用は変わってきます。
賃貸アパート・マンションへの引越しは、初期費用の負担が大きくなります。立地や間取りなども物件選びの大切なポイントですが、初期費用にいくらかかるのかも、しっかりチェックしておきましょう。
入居時の初期費用の相場
「実際に初期費用はいくらかかるの?」という点が一番気になるところかと思います。
初期費用は契約する物件によって変わりますが、平均的な目安は次のとおりです。
初期費用の目安 家賃の4~5ヵ月分
したがって、初期費用は家賃によって変動します。それでは、家賃別に初期費用の相場を見てみましょう。
【家賃別・初期費用の相場】
家賃の金額 | 初期費用の相場 |
5万円 | 20~25万円 |
6万円 | 24~30万円 |
7万円 | 28~35万円 |
8万円 | 32~40万円 |
9万円 | 36~45万円 |
10万円 | 40~50万円 |
12万円 | 48~60万円 |
15万円 | 60~75万円 |
20万円 | 80~100万円 |
30万円 | 120~150万円 |
35万円 | 140~175万円 |
この表を見てもわかるように、初期費用はかなり高額なのが理解できるかと思います。
一般的な物件でも、初期費用は20~50万円ほどかかります。都心などにある高級賃貸マンションともなれば、初期費用は100万円オーバーです。
引越しをするときは、「入居にかかる初期費用」に加えて「引越し料金」もかかります。合せると数十万円の出費になるので、前もってお金を準備しておくことが大切です。
初期費用の内訳は9項目
初期費用が高くつくのは理解できたかと思います。それでは、初期費用はどのような内訳になっているのでしょうか。
初期費用に含まれている項目は、次のとおりです。
初期費用の内訳】
- 敷金
- 礼金
- 仲介手数料
- 前家賃
- 日割り家賃
- 保証会社利用料
- 鍵交換費用
- 火災保険料
- 消毒費用
それぞれの項目の内容や相場について、順に詳しく解説します。
1.敷金
内容 | 退去時に部屋の損傷・汚れを修繕するためのお金。また、入居者が家賃を滞納した場合、敷金から充てるケースもあります。 |
相場 | 家賃の1~2ヵ月分 |
敷金は退去するときの修繕費に充てられ、余ったお金は借り主に返金されます。
ただし、敷金が安い物件の場合、そこから修繕費をすべてまかなうことができなければ、退去時に追加で費用を請求されるケースがあります。つまり、修繕にかかる費用を先に払うか後で払うかの違いがあるだけで、最終的に支払う金額に変わりはありません。
初期費用をできるだけ安く済ませるには、敷金が安いところを選ぶと良いです。そうすれば、家賃の1ヵ月分は初期費用を抑えることができます。
ちなみに、人気の高い物件ほど敷金も高くなる傾向があります。
2.礼金
内容 | 入居する物件の大家さんに「入居させてくれてありがとうございます」という意味を込めて支払うお金のこと |
相場 | 家賃の1~2ヵ月分 |
礼金は、敷金と違って「返金」はされません。大家さんに対する「お礼のお金」と考えておきましょう。
とはいえ、礼金の意味づけにイマイチ納得できない人もいるかもしれません。そういう場合は、礼金がない物件もありますから、そのようなところに入居すれば初期費用は抑えられます。
なお、礼金がかからない物件は、次のようなケースが考えられます。
【礼金の徴収がないケース】
- 入居条件のハードルを下げる
大家さんが空室を埋めるために、礼金をなくして入居しやすい条件にする場合があります。 - 礼金を家賃に上乗せする
「礼金0円」の物件でも、その分を家賃に上乗せしているところがあります。初期費用は安くなりますが、それだけ毎月の家賃が高くなります。 - UR住宅の場合
公的融資を利用して建てられたUR賃貸住宅(公団住宅)などは、礼金を徴収しない決まりになっています。
入居しやすくするために礼金をなくしている場合は「お得物件」です。しかし、礼金がかからなくても家賃が高くなっているケースもあるため、注意が必要です。
3.仲介手数料
内容 | 新居を紹介してくれた不動産会社に支払う手数料(成果報酬)のこと |
相場 | 家賃の0.5~1ヵ月分+税 |
賃貸借契約において、不動産会社が受け取ることができる仲介手数料は「家賃の1ヵ月分が上限」と定められています。
さらに、不動産会社は仲介手数料を「大家さん」と「借り主(あなた)」から受け取ることができます。
そのため、不動産会社は「大家さんから0.5ヵ月分」と「借り主から0.5ヵ月分」の手数料を受け取るのが一般的です。たとえば、家賃6万円の物件であれば、あなたが支払う仲介手数料は3万円ということになります。
4.前家賃
内容 | 入居月の翌月分の家賃のこと |
相場 | 家賃の1ヵ月分 |
基本的に、家賃は「前払い」になります。そのため、入居する際は、翌月分の家賃(前家賃)も初期費用に含めるのが一般的です。
フリーレント物件とは?
しかし、「フリーレント物件」であれば、前家賃を支払う必要はなくなります。フリーレント物件とは、「1ヵ月分の家賃が無料になる賃貸物件のこと」です。物件によっては、3~6ヵ月分の家賃が無料になるところもあります。
フリーレント物件は、一定期間の家賃を無料にすることで空室を埋めるのが狙いです。
ただ、家賃自体を下げてしまうと、すでに入居している住民が支払っている家賃と差がついてしまい、クレームにつながる恐れがあります。そのため、家賃を安くするのではなく、一定期間の家賃を無料にすることで、新しい入居者を募るのです。
ですから、フリーレント物件を選べば「家賃1ヵ月分以上の費用」を節約することができます。
ただし、フリーレント物件は「最低住居期間」が決まっています。もし、その期間中に解約する場合は、違約金が発生するので注意しましょう。
5.日割り家賃
内容 | 入居月の家賃を入居日に応じて日割り計算した費用 |
相場 | 家賃の1ヵ月分以下 |
入居月の家賃は、日割り計算された金額が初期費用に含まれます。たとえば、家賃70,000円のアパートに引っ越す場合を考えてみましょう。
【日割り家賃】※1ヵ月を30日とする
入居日 | 日割り家賃 |
1日(月初) | 70,000円(30日分) |
16日(月半ば) | 35,000円(15日分) |
26日(月末) | 14,000円(5日分) |
このように、入居時期によってその月の日割り家賃が変わってきます。
初期費用を抑えるのであれば、月末の引越しのほうが良いです。ただし、その分、旧居で支払う家賃は高くなるため、結局のところ、出費の差はほとんどないと思います。
6.保証会社利用料
内容 | 保証人を立てる代わりに、保証会社を利用するときにかかる費用 |
相場 | 家賃の0.5~1ヵ月分 |
保証会社を利用しなければいけないのは、以下のようなケースです。
【保証会社を利用するケース】
- 連帯保証人がいない
- 保証人の支払い能力が低い
- 連帯保証人が不要の物件
このような場合は、保証会社を通して家賃を支払うことになります。万が一、家賃を滞納してしまった場合でも、一旦、保証会社が家賃を立て替えてくれます。ですから、大家さんにとっては、家賃滞納のリスクを避けることができます。
また、借り主にとっては、「保証人を立てなくても契約できる」というメリットがあります。ただし、保証会社との契約は2年ごとに更新するのが一般的で、その際に更新料がかかります。
7.鍵交換費用
内容 | 前の入居者が使っていた鍵から自分が使う鍵に交換するのにかかる費用 |
相場 | 10,000~20,000円 |
鍵を交換するかしないかは自分で決めることができます。ただし、交換しないと前に入居者と同じ鍵を使うことになるため、防犯上は良くありません。初期費用は高くなってしまいますが、鍵は交換しておくと安心です。
ちなみに、オートロックの物件は、鍵交換費用が2~3万円程度と割高になります。
8.火災保険料
内容 | 火災や水回りのトラブルなどで損傷した建物や家財の補償をしてくれる保険に加入する費用 |
相場 | 20,000円 |
火災保険であれば、どこの保険会社で加入しても構いません。こちらから何も言わなければ、不動産会社から火災保険を紹介されます。他に宛がなければ、そこの火災保険に加入すれば問題ありません。
しかし、不動産会社から紹介される火災保険は、少し割高になります。実際は、加入条件などを必要最低限に抑えれば、保険料をもっと安くすることができます。
たとえば、私が以前、不動産会社から紹介された火災保険は、2年更新で保険料は20,000円でした。つまり、年間10,000円です。
ただ、普段から利用している保険会社があったので、そちらで火災保険の見積もりを取ったところ、年間の保険料は4,000円でした。
このように、保険会社や加入条件を見直せば、火災保険料は安くなります。ですから、不動産会社からすすめられた火災保険にそのまま加入するのではなく、他社の火災保険も検討することをおすすめします。
9.消毒費用
内容 | 部屋の害虫や雑菌を駆除・消毒するのにかかる費用 |
相場 | 10,000~20,000円 |
賃貸契約の見積書には、はじめから消毒費用が含まれています。ですから、「必ずかかる費用」と勘違いしやすいですが、消毒するかしないかは自分で決めれます。
害虫などが気になる場合は、消毒作業を依頼しましょう。しかし、消毒が必要ない場合は、消毒作業を断ることも可能です。その場合は、必ず見積書から消毒費用を除いてもらいましょう。
害虫駆除は市販品でも可能です。入居前に自分でやっておけば、費用はかなり抑えられます。
初期費用の相場を項目ごとにチェック
それでは、初期費用の内訳ごとに料金相場をまとめます。
費用項目 | 相場 |
敷金 | 家賃の1~2ヵ月分 |
礼金 | 家賃の1~2ヵ月分 |
仲介手数料 | 家賃の0.5~1ヵ月分+税 |
前家賃 | 家賃の1ヵ月分 |
日割り家賃 | 家賃の1ヵ月以下 |
保証会社利用料 | 家賃の0.5~1ヵ月分 |
鍵交換費用 | 10,000~20,000円 |
火災保険料 | 20,000円 |
消毒費用 | 10,000~20,000円 |
このように、それぞれの費用項目において、上限と下限にかなりの開きがあります。したがって、項目ごとに費用を抑えることができれば、初期費用はかなり節約できるはずです。
初期費用が安いケースと高いケース
初期費用は、契約する物件によって変わります。それでは、初期費用が高いケースと安いケースを比べた場合、どれほどの差が生じるのでしょうか。
ここでは、家賃を70,000円と想定し、初期費用が「安い物件」と「高い物件」の差を見てみましょう。
初期費用のシミュレーション
- 【家賃】70,000円
- 【一般的な初期費用の相場】280,000~350,000円
初期費用が安いケース
費用項目 | 家賃換算 | 金額 |
敷金 | 1ヵ月分 | 70,000円 |
礼金 | なし | 0円 |
仲介手数料 | 0.5ヵ月分 | 35,000円 |
前家賃 | 1ヵ月分 | 70,000円 |
日割り家賃 | 0.5ヵ月分 | 35,000円 |
保証会社利用料 | 利用なし | 0円 |
鍵交換費用 | 15,000円 | |
火災保険料 | 別会社で加入 | 5,000円 |
消毒費用 | なし | 0円 |
合計(初期費用) | 230,000円 |
初期費用が高いケース
費用項目 | 家賃換算 | 金額 |
敷金 | 2ヵ月分 | 140,000円 |
礼金 | 1ヵ月分 | 70,000円 |
仲介手数料 | 0.5ヵ月分 | 35,000円 |
前家賃 | 1ヵ月分 | 70,000円 |
日割り家賃 | 1ヵ月分 | 70,000円 |
保証会社利用料 | 0.5ヵ月分 | 35,000円 |
鍵交換費用 | 15,000円 | |
火災保険料 | 紹介された保険に加入 | 20,000円 |
消毒費用 | 利用あり | 20,000円 |
合計(初期費用) | 475,000円 |
このように、家賃が同じ金額でも、条件によっては初期費用にかなりの差が生じます。上記のシミュレーション結果を比べると、初期費用に20万円以上の差が生じました。
ですから、物件を選ぶ際は、初期費用の違いについても必ず確認するようにしてください。
初期費用の節約術については、次の記事に詳しくまとめています。引越しの出費をできるだけ抑えたい人は、ぜひ参考にしてください。
まとめ
ここまでの説明で、初期費用の相場や内訳について理解できたかと思います。
初期費用は、引越しにかかるお金のなかでも大きなウェイトを占めています。ですから、「初期費用をできるだけ安く抑えたい!」と考えるのは当然のことだと思います。
まずは、初期費用の内訳をきちんと理解することが重要です。さらに、物件を探すうえで、どの項目が安くなるのかをチェックしてみましょう。物件によって条件は異なりますから、必ず比較するようにしてください。
ただし、初期費用が安くても、気に入る物件でなければ意味がありません。あなたが希望する立地や間取り、室内設備などの条件が満たされているかも大切なポイントです。その上で、初期費用の安い物件を探せば、きっと納得のいく新居が見つかると思います。
なお、引越し料金も業者によって大きな差が生じます。
引越し業者を選ぶ際は、できるだけ複数社から見積もりを集め、料金やサービス内容を比べるようにしましょう。