引越しのときは何かと手続きが多く、やることをまとめながら準備をする必要があります。住民票においても、「住所変更する必要はあるの?」「まず何から始めるの?」といろいろ疑問が出てくるかと思います。
引越しの際、最も重要な手続きの1つに「住民票の住所変更」があります。わかりやすく言えば、住民票を「旧住所」から「新住所」へ移す手続きです。住民票の手続きを行う際、まず役所に「転出届」を提出する必要があります。
ここでは、転出届の「方法」「手続きのタイミング」「必要書類」などについて詳しく説明します。
なぜ転出届は必要?住民票の住所変更をしないとどうなるの?
「住民票は移す必要があるの?」と疑問に思っている人もいるかもしれませんが、引越しをするときは住民票を「新住所」へ移さなければいけません。
そこで最初に行うのが「転出届」です。転出届とは、「引越ししますよ」という宣言のようなものです。
戸籍が「身分関係を公的に証明するもの」なのに対して、住民票は「居住関係を公的に証明するもの」です。もし引越しをしたのにも関わらず住民票を移さないと、現住所を公的に証明できなくなってしまいます。
具体的に困ることは、以下のとおりです。
住民票を移さないと困ること
- 税金、年金の知らせが届かない
- 新住所で自治体の行政サービスが受けられない
- 新住所での選挙権がない
- 運転免許証の住所変更ができない
- パスポートを取得する場合、住民票を旧居役所まで取りに行かなければいけない
- 「5万円以下の罰則」を受ける可能性がある
さまざまな手続きを行うときに、住民票が求められる機会は多いです。その際に、新住所を証明できなければ、手続きを進められない可能性も十分にあります。
手続きをしなかったり遅れたりするほど、後になって面倒なことが増えてきます。したがって、引越しをするときは必ず住民票を新住所へ移さなくてはいけません。
住民票の住所変更の基礎
なお、引越し先が「市区外」か「同一市区内」かによって、住民票の手続きは異なります。
- 市区外への引越し⇒転出届と転入届が必要
- 同一市区内への引越し⇒転居届のみ必要
手続きを進める際は、まずこの違いをきちんと理解しておきましょう。
住民票を異動する必要がない場合
ただし、生活拠点が変わらない場合は、住民票を移さなくても認められることがあります。具体的には、以下のようなケースが考えられます。
住民票を異動しなくても良い場合
- 新住所に住む期間が1年以内の場合
- 進学で実家から離れても、卒業後に戻ることが決まっている場合
これらのケースでは、「生活拠点が変わらない」と見なさせるため、住民票の手続きをしてなくても良いことになります。
住民票の住所変更の流れ
ここまでの説明で、「なぜ住民票の移さなければいけないのか」を理解できたと思います。
それでは、はじめに「住民票の住所変更の流れ」について知っておきましょう。住民票を移すには、以下の手順で進めてください。
住民票異動の流れ
- 旧住所の役所で「転出届」を提出する(引越しの14日前から当日まで)
- その場で「転出証明書」をもらう
- 新居へ引っ越す
- 新住所の役所で「転入届」を提出する(引越した当日から14日以内)
引っ越す前に、転出届を申請して「転出証明書」をもらう必要があります。この書類がなければ、引越し先の役所で「転入届」を出すことができません。つまり、転出届は「転出証明書をもらうための手続き」になります。
転出届の手続きはいつまでに行うべきか
前述のとおり、転出届は引越し前(引越しの14日前~当日まで)に申請しなければいけません。この期間に手続きを済ませておく必要があるため、忘れないように気をつけましょう。
転出届の申請を忘れてしまったらどうする?
とはいえ、うっかりしていて転出届の申請を忘れてしまうケースも考えられます。
その場合は、すみやかに以前住んでいた地域の役所へ転出届を提出しなければいけません。その上で「転出証明書」をもらわなければ、新住所の役所で「転入届」を申請できないからです。
転出届を申請するには、「旧住所の役所まで出向く」か「郵送で提出する」のどちらかです。ただ、どちらにしても時間がかかるため、すぐに手続きを進めましょう。
ちなみに、「転入届の期限は、引越してから14日以内」ですから、遅くともそれまでには手続きをしなければいけません。
転出届の手続き方法と必要書類
「転出届の必要性」を理解していただくための前置きが長くなりましたが、ここからは「転出届の進め方」について具体的に説明します。
転出届は、現在住んでいる市区町村の役所・役場で手続きをします。その際、「引越し先の住所」を記入するため、間違えないように注意しましょう。
また、「転出予定年月日」も記入しなければいけません。ただし、引越しの日取りが確定していない場合は、「予定日」で大丈夫です。実際の引越し日が早まったり遅れたりしたとしても問題ありません。
転出届の申請に必要な書類は、以下のとおりです。
転出届に必要な書類
- 転出届申請書(役所でもらえます)
- 本人確認ができるもの(運転免許証、健康保険証、パスポートなど)
- 印鑑登録証明書
- 印鑑(認印)
- 国民健康保険証、高齢者医療受給者証、乳幼児医療証など(該当者のみ)
これらの書類とあわせて転出届を提出すれば、手続きは完了です。
そのときに、「転出証明書」がもらえます。これは、新住所の役所で「転入届」をするときに必ずいるので、引越しでなくしてしまわないよう大切に保管しましょう。
代理人が転出届を申請する場合
ただ、中には「忙しくて役所にいく時間がない」という人もいると思います。その場合、代理人による申請も可能です。代理人が転出届を提出するときは、以下の書類が必要になります。
代理人が転出届を申請する場合の必要書類
- 転出届申請書(役所でもらえます)
- 委任状(各自治体のホームページからダウンロード可)
- 代理人の本人確認書類
- 代理人の印鑑(認印)
- 国民健康保険証、高齢者医療受給者証、乳幼児医療証など(該当者のみ)
これらの書類を用意すれば、本人が行かなくても代理人を立てることで手続きは可能です。
郵送で転出届を提出する場合
しかしながら、「忙しいけど、代理人がいない」というケースも考えられます。また、手続きするのを忘れていて引越してしまった場合、新居が遠ければ、わざわざ戻って転出届を出すのが難しいケースもあります。
このように、役所の窓口で手続きをするのが難しいときは、「郵送」で転出届を提出することが認められています。
なお、その際には以下の書類が必要になります。
郵送での手続きに必要な書類
- 転出届申請書(郵送用)
- 本人確認書類のコピー(運転免許証、健康保険証、パスポートなど)
- 返信用封筒 ※転出証明書を送ってもらいたい住所(旧居または新居)を記入する
- 返信料金分の切手
- 国民健康保険証、高齢者医療受給者証、乳幼児医療証などのコピー(該当者のみ)
郵送での手続きは、以下の手順で進めましょう。
郵送で転出届を提出するときの手順
- 旧住所地の役所のホームページで「郵送用の転出届」をダウンロードして印刷する
- 転出届(郵送用)と本人確認書類のコピーを郵送する
- 役所から「転出証明書」が送られてくる(約1週間後)
この手順に従えば、郵送で手続きを完了することができます。
郵送で手続きができる期間は、「引っ越す14日前」から「引越してから14日以内」です。郵送で手続きを行う場合は、通常より時間がかかります。「忙しくて役所に行けない人」「忘れていて引越し後に手続きを行う人」は早めに取りかかりましょう。
転出届の申請後、引越しが中止になったらどうする?
ほとんどないと思いますが、転出届を出したあとに引越しが中止になった場合は、どうすれば良いでしょうか。
この場合は、転出届を取り消す必要があります。もらった転出証明書を持って、もう一度、役所に行きましょう。窓口で問い合わせれば、そのまま手続きを進められます。これをしないでおくと「住所不定」となり、後になっていろいろと面倒なことになりますから注意してください。
マイナンバーカードや住基カードを持っている場合
「マイナンバーカード(個人番号カード)」や「住基カード(住民基本台帳カード)」を持っている場合は、自宅のパソコンからも転出届の申請ができます。これを「電子申請サービス」といいます。ただし、この方法で申請するには「ICカードリーダー」が必要になります。
パソコンから転出届を申請したあとは、新住所の役所で「転入届」と「マイナンバーカードか住基カード」を提出します。そこで暗証番号を入力すれば完了です。したがって、この申請方法の場合は「転出証明書」がいりません。
海外へ引っ越す場合は、転出届は必要?
海外へ引越しをする人もいるかと思いますが、この場合でも「転出届」を提出する必要があります。ただし、「転出証明書」は国内で引越しをするときに必要な書類ですから、海外へ引っ越すときには発行されません。
住民票の住所変更についての補足
前述でもふれましたが、住民票の移動手続きは「同一の市区町村内で引っ越す場合」と「引越しで住まいの市区町村が変わる場合」で異なります。
同一の市区町村内で引っ越す場合
この場合は、「転入・転出届」ではなく、「転居届」が必要になります。同じ市区町村内での引越しでも、住所は変わるはずです。その場合、「公的に登録されてる住所」を変更しなければいけません。この手続きが「転居届」です。なお、転居届は1回の手続きで完了します。
他の市区町村に引っ越す場合
この場合は、上記で説明したとおり、旧住所地で「転出届」を申請したあとで、新住所地で「転入届」が必要になります。ですから、この場合は2回の手続きで完了します。
いずれにしても、「公的に登録されている住所」を変更するのに違いはありません。引越しの際に忘れてはいけない手続きですから、役所にいくスケジュールを立てて手続きを済ませましょう。
まとめ
それでは、ここまで説明してきたことをまとめます。
【転出届の申請方法まとめ】
対象 | 旧住所と異なる市区町村へ引越しをする人 |
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届出場所 | 旧住所地の市区町村役所・役場 |
代理人 | 可 |
期限 | 引越しの14日前から当日まで |
手数料 | なし |
郵便対応 | 可 |
必要書類 | 本人または世帯主が申請する場合 転出届申請書 本人確認ができるもの(運転免許証、健康保険証、パスポートなど) 印鑑登録証明書 印鑑 国民健康保険証、高齢者医療受給者証、乳幼児医療証など(該当者のみ) 代理人が申請する場合 転出届申請書 委任状(各自治体のホームページからダウンロード可) 代理人の本人確認書類 代理人の印鑑 国民健康保険証、高齢者医療受給者証、乳幼児医療証など(該当者のみ) 郵送で申請する場合 転出届(郵送用) 本人確認書類のコピー(運転免許証、健康保険証、パスポートなど) 返信用封筒 ※転出証明書を送ってもらいたい住所(旧居または新居)を記入する 返信料金分の切手 国民健康保険証、高齢者医療受給者証、乳幼児医療証などのコピー(該当者のみ) |
引越しをすると、運転免許証の住所変更もしなければいけません。ただ、この手続きには「新住所が載っている住民票」が必要になります。ですから、大前提として「転出・転入」の手続きを終わらせておく必要があります。
運転免許証は「最も信頼度の高い身分証明書」です。ですから、運転免許証の住所変更をするまえに、転出・転入届は最優先で行いましょう。
引越しのときにやることはたくさんあるため、いろいろと面倒に感じることも多いかと思います。しかし、転出届の手続きにはそれほど時間はかかりません。しっかりスケジュールを決めて、早めに手続を終わらせておくとこをおすすめします。