引越しをするときに、まず優先的に進めなければいけないのが「新居探し」と「入居契約」です。これが終わらないことには、引越しの準備や手続きなどを進めるわけにはいきません。
ただ、入居手続きをするうえで、以下のような疑問が出てくるかと思います。
「新居はどうやって探せば良いの?」
「入居するまでの期間はどのくらい?」
「契約に必要な書類が知りたい」
「契約を交わすうえで注意することは何?」
入居までの大まかな流れは、「部屋探し→入居申し込み→契約」の順番です。それぞれステップごとに注意しておきたいポイントがあるため、それを理解したうえで手順を踏んでいくと良いです。
「アパートやマンションを借りる」と言っても不動産契約に変わりはありませんから、慎重に手続きを進めましょう。また、入居条件だけに囚われず、退去するときの条件にも注意して契約することが重要です。
ここでは、「部屋探し」「入居申し込み」「契約」の3つにおいて、流れや注意点を詳しく説明します。引越しが「初めての人」や「不慣れな人」は、下記の内容を必ず確認してほしいと思います。
賃貸アパート・マンション契約までの全体の流れ
「新居を決めるときに何から始めれば良いの?」と頭の整理がついていない人もいるかと思います。ですから、はじめに「部屋探し」から「入居」までの全体の流れをシンプルに理解しておきましょう。
入居までの大まかな流れとしては、以下3つのステップがあります。
- 部屋探し
- 入居申し込み
- 契約
このなかで、手間と時間が一番かかるのは「部屋探し」です。
この3つの手順をさらに詳しく分けると、次のように8つのステップとして考えることができます。
【部屋探し~入居までの8つのステップ】
この図を見て全体を捉えておくと、何から始めれば良いのか理解しやすいと思います。ここからは、8つのステップごとに手順やポイントをさらに詳しく解説していきます。
【STEP1】部屋の希望条件を決める
物件を探し始めるまえに、どのような部屋に住みたいのか、ある程度の条件を絞っておく必要があります。そうすれば、不動産会社も条件に近い物件を探しやすいですし、さまざまな提案もしてくれます。ただ闇雲にインターネットなどで物件を探しても、条件がハッキリしていないと時間がかかるだけです。
部屋を探すときは、以下の8つの項目において、あなたの希望条件をある程度決めておきましょう。
【決めておきたい物件選びの8つの条件】
- 家賃(目安は月収の3割程度)
- 入居費用(物件によって大きな差が生じる)
- 間取り(自分の生活スタイルに合った広さ、仕様)
- 場所(通勤、通学に便利なところ)
- 室内設備(浴室、キッチン、エアコンなど)
- セキュリティ(オートロック、カメラ付きインターホンの有無など)
- 周辺環境(スーパー、薬局、コンビニ、飲食店、病院など)
- ペット有無(ペットがいる場合は、飼育が認められた物件を探す)
希望する条件をもとに部屋探しを進めれば、無数にある物件情報のなかから、あなたに合ったところをスムーズに見つけることができます。
ただし、あれもこれもと条件を提示しすぎるのは良くありません。条件が多くなるほど該当する物件は少なくなりますから、それだけ選択肢は狭くなってしまいます。
ですから、「ここだけは譲れない!」というポイントだけ押さえておいて、あとは候補となる複数の物件から選ぶのが賢い方法です。
「家賃」は部屋探しの最も重要な条件
部屋探しの条件として、最も重要になるのが「家賃」です。いくら条件が良くても家賃が高すぎては、今後の生活が苦しくなってしまいます。ですから、収入とのバランスを見て、十分に生活をしていける家賃のところを探すことが大切です。
家賃の目安は「月収の3割程度」と考えておきましょう。
たとえば、月収30万円であれば、「家賃10万円以内」の物件を探します。そうすれば、無理なく生活していけるはずです。このラインを越える物件でも住めないことはありませんが、入居審査が通らない可能性があるので注意しましょう。
家賃は「住む地域」によっても大きく変動します。都心であれば、一人暮らしの家賃でも10万円前後はかかります。しかし、地方であれば、5万円程度の家賃でも条件の良い物件はたくさんあります。
ですから、「月収の3割程度」というのはあくまでも目安であり、それより高くなったり安くなったりする可能性は十分にあります。ただ、「無理なく生活していける家賃のライン」は自分でしっかり見極めておきましょう。
【STEP2】物件を探す
物件の希望条件が決まってきたら、次は物件探しです。物件を探す方法は、「インターネットから探す」または「不動産会社に直接行って探す」のどちらかです。
インターネットで物件を探すときの流れ
- インターネットで気に入った物件を探す
- 情報を提供している不動産会社に連絡して空き状況を確認する
- 見学の予約をして実際に部屋を見る
インターネットの場合、たくさんの物件情報を気軽に見ることができて便利です。物件情報をいくつも比べるうちに、どのような物件がいいのか、あなたの希望がハッキリしてくると思います。
ですから、「物件を見る目を肥やす」という意味でも、インターネット上の物件情報は見ておくことをオススメします。
気に入った物件があれば、その情報を提供している不動産会社に連絡して、まだ空いているかを確認します。空いていれば見学の予約をして、実際に部屋を見てみましょう。
ただ、これでは1件1件回るのに手間がかかってしまいます。ですから、一度、不動産会社に直接行って、見学したい物件をいくつかピックアップしておくと良いです。そうすれば、1日に複数の物件を見学できるため、効率よく探すことができます。
不動産会社(仲介業者)に直接行って探すときの流れ
- 条件を伝えて合致する物件を紹介してもらう
- その中から見学したい物件を選ぶ
- 当日もしくは後日、物件を見学する
「インターネット上の情報」も「不動産会社が持っている情報」も共有されていることが多いため、不動産会社に直接行って物件を探しても問題ありません。
ただ、不動産会社によっては、「共有していない物件情報」を持っているケースもあります。ですから、時間の許すかぎり、できるだけ多くの不動産会社を回って情報収集することをオススメします。
不動産会社に直接行って探すメリットは、希望の条件をくみ取ってもらいやすいことです。細かな相談にも乗ってくれ、条件から少し外れていても、良い物件は積極的に提案してくれます。
段取りさえつけば、そのまま物件の見学に向かうことも可能です。ですから、テンポ良く物件を探すのであれば、直接不動会社に行ってしまったほうが早いです。
ただし、見学する物件が多くなると、1日で回るの難しくなります。その場合は、日を分けて見学のスケジュールを組むようにしましょう。
【STEP3】希望する複数の物件を実際に見学する
「百聞は一見に如かず」というように、物件を決めるときは実際に見てみるのが一番です。そうすれば、室内や周辺環境、そこの雰囲気までしっかり確認することができます。ですから、気になる物件は積極的に見学するようにしましょう。
物件を見るときは、以下のポイントについても確認するようにしてください。
物件見学でチェックするのを忘れやすいポイント
- 日当たり
- 日中、夜中の騒音
- 壁の厚さ
- 湿気や臭い
- 周辺の明るさ
- 面している通りの広さ
- 室内の電波状況
見学の際、物件の設備やデザインなどに注目しがちです。しかし、上記のポイントも、住み始めてからの生活に大きく影響することばかりです。意外と確認するのを忘れやすいポイントでもあるので注意しましょう。
見学の際、「あそこを確認し忘れた!」というのを防ぐために、部屋探しの流れやポイントをまとめたPDFファイルをご用意しました。
部屋探しのときは、印刷して活用していただければと思います。
入居物件を決定する
気に入った物件をできるだけたくさん見学をしたら、「家賃」「入居費用」「室内設備」「立地条件」などの条件をしっかり比較することが大切です。自分のなかで、どのポイントを重視するのか優先順位を決めて、そのうえでベストな物件を選びましょう。
ただし、物件は「生もの」のようなもので、いつまでも取っておけるわけではありません。人気の高い物件であれば、情報が掲載されたその日に入居者が決まってしまうところもあります。つまり、部屋探しは「早い者勝ち」なのです。
もちろん、しっかり条件を比較することは重要ですが、「ここに住みたい!」という物件があれば早めに押さえることをオススメします。他の人に先を越されてしまえば、「あの部屋に決めておけば良かった・・・」と後悔することになるでしょう。
【STEP4】入居申し込み・審査
入居の意思が決まったら、次はその物件の「入居申し込み」に進みます。申し込みの流れは、以下のおとりです。
【入居申し込みの流れ】
- 連帯保証人になってくれる人を決める
- 入居申込書を提出する
- 入居審査
連帯保証人
賃貸物件に入居するときは、連帯保証人を立てるのが一般的です。
これは、あなたが何らかの事情で家賃が払えなくなったときに、代わりとなる保証人が必要になるからです。ですから、あらかじめ連帯保証人になってくれる方を決めておかなければいけません。
連帯保証人として相応しいのは、あなたと信頼のおける関係で、かつ、ある程度の経済力を持っている方です。
なお、審査のときに、連帯保証人へ確認の電話がかかってきます。ですから、その旨は事前に保証人となる方に伝えておきましょう。
連帯保証人がいない場合
基本的には、連帯保証人が必要になりますが、なかには連帯保証人を立てられないという人もいます。そのような場合でも、入居が認められる物件があります。保証人となる方がいない場合は、そのような物件を探してみてください。
ただし、連帯保証人を立てずに入居契約を交わすときは、代わりに「保証会社」を利用することになります。保証会社を使う場合は、初回費用がかかり、さらに1~2年ごとに更新料を支払うことになります。
入居申込書を提出する
入居したい物件が決まったら、できるだけ早く「入居申込書」を提出しましょう。申込書を出さないと、入居審査に進めないからです。入居申込書には、「名前、住所、勤務先、年収、勤続年数など」を記入します。
入居審査
入居審査で最も重要視されるポイントは、入居希望者の「経済力」です。つまり、「収入が安定しており、家賃を払っていけるかどうか」が決め手になります。ですから、年収や勤務先、勤続年数、雇用形態、職種など、仕事に関することは細かくチェックされます。
ただ「収入が少なすぎる」「経済力と審査基準がかけ離れている」など、よほどの問題がなければ審査は通ると思います。審査には「2日~1週間程度」かかります。
事前に不動産会社から「審査に通るのは難しいかもしれない」ということを言われた場合は、念のため、審査の間も物件探しを進めておくと良いです。
【STEP5】入居手続きの必要書類を用意する
入居審査が無事に通ったら、いよいよ契約の段階です。不動産会社から必要書類についての指示がありますから、契約に必要なものを準備してきましょう。
一般的には、入居契約には以下の書類が必要になります。
- 賃貸借契約書(2部)
- 契約者の印鑑(シャチハタ不可)
- 契約者の住民票
- 契約者の身分証明書
- 契約者の収入証明書類(源泉徴収票、在職証明書など)
- 連帯保証人の承諾書
- 連帯保証人の身分証明書
- 連帯保証人の印鑑証明書
- 火災保険の申込書(または保険証券)
- 契約金(入居費用)
- 車検証(駐車場を借りる場合)
不動産契約になるため、書類の数は多いです。ここで手間取ると入居が遅れてしまうため、できるだけ早めに書類は準備しましょう。
必要書類を用意するときの注意点
■契約金
契約金(初期費用もしくは入居費用)とは、「敷金や礼金、前家賃、日割り家賃、火災保険料など、入居に必要な費用をすべて含めたもの」です。
初期費用は数十万円と大金になりますから、事前に振り込んでおくのが一般的です。または、必要書類を提出するときに不動産会社で現金払いすることも可能です。
なお、高額な初期費用をできるだけ抑えたい場合は、次の時期を参考にしてください。
■火災保険は選べる
契約を進めるうえで、火災保険への加入が必要になります。不動産会社から保険会社を紹介されると思いますが、「必ずそこで加入してください」という決まりはありません。
火災保険の条件を満たしていれば、他の保険会社で加入しても問題ないです。
「不動産会社から紹介される火災保険」は必要以上の補償内容がついている場合があります。そのため、保険料が割高になる傾向があります。
しかし本来であれば、補償内容を必要最低限にすることで保険料はもっと安くなります。もし「普段から使っている保険会社で加入したい」という場合は、補償内容を見直すことをおすすめします。
■連帯保証人が遠方にいる場合
連帯保証人となってくれる親から離れて暮らしている人もいるのではないでしょうか。
その場合、契約書などの必要書類を「郵送」でやり取りすることになると思います。通常より書類を用意するのに時間がかかるため、そのことを考えながら入居のスケジュールを立てるようにしましょう。
【STEP6】入居契約における重要事項の説明を受ける
契約書にサインをして印鑑を押す前に、「重要事項説明」を必ず受けなければいけません。この説明は、不動産会社が書面をもとに口頭で行ってくれます。
その「賃貸借重要事項説明書」には、契約条件や部屋情報が細かく書かれています。連帯保証人にも目を通してもらい、ダブルチェックをしておくと安心です。
【STEP7】賃貸借契約を交わす
契約書や必要書類を提出すれば、契約は完了です。ただ最後に、もう一度、「入居費用」「退去費用」「契約の更新料」「最低契約期間」など、金銭面にかかわる重要なポイントをしっかり確認しておいてください。
契約を交わせば、あなたもその内容を認めたことになります。退居するときに「話が違う!」とあとから主張しても、契約内容に沿っていないことは通用しません。
ですから、契約内容はできるかぎり丁寧にチェックすることが大切です。
【STEP8】鍵の引き渡し~入居
入居当日は、不動産会社に行って新居の鍵をもらいます。そうすれば、いよいよ新居での生活が始まります。
引越し当日は、ライフライン(電気、ガス、水道)を確保することがとくに重要です。それには引越し前の手続きが必要になりますから、忘れないように気をつけてください。
※なお、ライフラインの引越し手続きについて不安がある人は、以下の記事で詳しくチェックしましょう。
引越し準備・各種手続き(入居契約後~引越し前日)
ここまでは、入居手続きの流れについて詳しく解説してきました。
ただ、引越しにともなう手続きは、それだけではありません。入居がほぼ決まった段階で、同時に進めたい準備や手続きは他にもあります。
引越し前にやることを簡単にまとめると、以下のとおろりです。
【引越し準備・各種手続き】
住居 | 退去手続き |
---|---|
引越し | 荷造り 引越し業者の手配 梱包資材の調達 不用品の処分 掃除 |
手続き | 電気、ガス、水道などのライフラインの停止・開始 転出届(市区外に引っ越す場合) 印鑑登録の廃止(市区外に引っ越す場合) 国民健康保険の資格喪失届(市区外に引っ越す場合) インターネットの移転申し込み |
※各手続きについて詳しく知りたい場合は、当サイト内の記事を参考にしてください。
荷造りや引越し業者の手配はもちろんのこと、引越し前後は何かと手続きに追われます。必要なことをリストアップして、しっかりスケジュールを立てながら準備を進めましょう。
入居手続きにはどのくらいの期間がかかる?
部屋探しから入居までの期間は「長くて3ヵ月」ですが、「早ければ1ヵ月」です。入居までの期間が長くなるのは、以下のようなケースが考えられます。
入居までの期間が長くなるケース
- 新居がなかなか決まらない
- 連帯保証人を決めるのに時間がかかる
- 契約の必要書類を用意するのに時間がかかる
- 入居審査が長引く
入居するまでの期間が長くなってしまうのは仕方のない事情もありますが、ほとんどの場合は、「部屋がなかなか決まらない」というのが理由です。しかし、早い人であれば1日で新居を決めることもあります。入居手続きもスムーズに進めば、部屋探しから1ヵ月も経たないうちに引越しを終える人もいます。
引越しの何日前から部屋探しを始めると良い?
それでは、いつから部屋探しを始めると良いのでしょうか。
急な引越しの場合は部屋探しをすぐに始める
転勤などで急に引越しが決まった場合は、有無も言わずにすぐ新居を探し始めてください。もし引越し時期までに新居が見つからなければ、それまでしばらく「ホテル暮らし」ということも考えられます。
ですから、新居探しは最優先で進めると良いです。
一般的には2ヵ月ほど前から部屋探し
引越し時期を自分で決められる場合は、「2ヵ月ほど前」から新居を探し始めると良いです。
引越しの1ヵ月前から新居を探し始めると、「部屋の条件」や「契約条件」などをゆっくり比較する時間が取れません。場合によっては、妥協して入居を決めることになってしまいます。
一方、3ヵ月前から部屋を探し始めた場合、好条件の物件を見つけるのに時間を十分にかけることができます。ですから、その点においてはメリットがあります。
しかし、気に入った物件が思いのほか早く見つかった場合、「1ヵ月後には入居してください」と不動産会社から求められることがあります。
その場合、「引越し予定日を早める」か「家賃を引っ越す前から払い始める」のどちらかの方法を取ることになります。
つまり、新居の決定が早すぎるのも問題なのです。
気に入った物件を数週間や数ヶ月もキープすることはできません。ですから、「新居を決めたら約1ヵ月後には入居しなければいけない」ということは覚えておきましょう。
したがって、新居探しは「引越しの2ヵ月ほど前」から始めるのが良いタイミングです。
部屋探しの手順・入居契約の流れと必要書類を印刷できるPDFファイルにまとめました。
このページで説明した流れを、わかりやすくPDFファイルにまとめました。実際に物件を探すときは、印刷して活用していただければと思います。
失敗しない部屋探しのコツ!【部屋探しの手順】【入居契約の流れ】pdf(印刷用)
まとめ
今回は、賃貸アパート・マンションに入居するときの手続きの流れについて説明してきました。
肝心なのは、なんと言っても「新居探し」です。希望する条件をしっかり見極めて、納得のいく部屋を探しましょう。
さらに、契約内容についても丁寧に確認しておく必要があります。難しいことがたくさん書いてあるため、面倒に感じるかもしれません。とはいえ、重要な契約になりますから、分からないことは不動産会社に必ず確認してから進めましょう。
入居には数十万円のお金がかかります。物件によって初期費用は大きく異なるため、それについてもきちんと比較検討することが大切です。そうすれば、納得して気持ちよく新居へ引っ越せると思います。
なお、引越し料金も業者によって全然違うので注意してくださいね。
実際に見積もりを比較すると、料金に数万円以上の差が生じるケースもあります。
ですから、引越し業者を選ぶ際は、各社の見積もりを比較することをおすすめします。